劇団「地蔵中毒」大谷皿屋敷が豊かな時間をお約束、『無教訓意味なし演劇vol.12 おめかし、鉄下駄、総本山〜削ればカビも大丈夫〜(村の掟、全無視Edition)』稽古場レポート

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前列左から、三葉虫マーチ、東野良平、大谷皿屋敷、神谷圭介、フルサワミオ、川舩晃平(後列左から)うちやまきよつぐ、ごどう、かませけんた、立川がじら、佐藤一馬、佐々木タケシ (c) (撮影:塚田史香)
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劇団「地蔵中毒」大谷皿屋敷が豊かな時間をお約束、『無教訓意味なし演劇vol.12 おめかし、鉄下駄、総本山〜削ればカビも大丈夫〜(村の掟、全無視Edition)』稽古場レポート

“知る人ぞ知る”の次のフェーズへ乗り出しつつある劇団「地蔵中毒」が、1年2か月ぶりに本公演を行う。タイトルは、「無教訓意味なし演劇vol.12『おめかし、鉄下駄、総本山〜削ればカビも大丈夫〜(村の掟、全無視Edition)』」。作・演出は、大谷皿屋敷。出演者には、よく出るメンバー(実質、劇団員)のほか、テニスコートの神谷圭介、日本のラジオの田中渚らが名前を連ねる。2020年11月12日(木)~15(日)の全7公演、下北沢・駅前劇場での上演だ。

劇場公演はすでに完売回も出ているが、14日(土)と15日(日)には、イープラスの「Streaming+」で、同劇団初の劇場生中継(インターネット配信)が行われる。現時点で、上演時間は90分(休憩なし)を予定。

劇場での演劇がむずかしいこの時期に、大谷はなぜ公演を決断したのか。地蔵中毒はコロナ禍で何を感じ、withコロナ時代ともいわれる今、どのような演劇をみせるのか。稽古場を取材し、話を聞いた。

終わったらすぐにマスク。

<ご参考>コロナ禍における地蔵中毒界隈の動き

地蔵中毒は、今年(2020年)5月に公演をやむなく中止した。
主宰の大谷は、“深夜の蒲田駅にいたヤバいやつ”としてテレビ東京の『家、ついて行ってイイですか?』(3月取材。6月17日放送)に声をかけられ、ごみ屋敷と化した自宅の様子を地上波でお披露目、お茶の間をざわつかせるとともに、知名度を上げた。並行して大谷は、コロナ禍においても“注目のナンセンス劇団の劇作家”として躍進を続け、7月にはケラリーノ・サンドロヴィッチのオンライン配信公演『PRE AFTER CORONA SHOW The Movie』に(参加が決まるも大人の事情で叶わず、既成台本から二言だけ台詞が使用され)脚本協力としてクレジットされた。8月には松尾スズキのメルマガ会員限定配信のオンライントークイベント『スナック松尾』にゲスト出演した。10月には安藤玉恵による企画『“とんかつ”と“語り”の夕べvol.1』に阿部定をテーマにした一人芝居『切断』を書き下ろし、作・演出を務めている。
劇団としては、3月に天久聖一企画のYouTube動画『ヒナ談』、8月に渋谷コントセンターの「テアトロコント」(ユーロライブ)に出演。また同月にリリースされたラブリーサマーちゃんのMV『AH!』に、“よく出るメンバー”(実質、劇団員)たちが参加。さらに、同月、劇団の公式YouTubeチャンネル「地蔵中毒の『恥骨船』」をスタートさせ、以後、各種動画コンテンツを次々アップロードしている(詳細は下記「公式YouTubeチャンネル情報」欄を参照)

10月24日には同チャンネルにおいて、テレビ東京「家、ついて行ってイイですか?」でも取り上げられた短編作品『新宿』を新たに公開した(下記の動画)。

【動画】テアトロコントvol.28 劇団「地蔵中毒」『新宿』~テレビ東京「家、ついて行ってイイですか?」でも取り上げられた短編作品!

■下北沢・駅前劇場、初進出

稽古は、川舩晃平(参画ノマド)とフルサワミオのシーンからはじまった。ざんねんながら阿比留丈智(劇団チャリT企画)、田中渚(日本のラジオ)、hocoten、鈴木理子は不在であったが、その穴を“よく出るメンバー”たちが急遽の代役で埋めていく。代役になっても笑いが滞ることはなく、そこに大谷の脚本の強さと、メンバーのセンスを感じた。

同時に、本来の配役だからこその笑いも頻発し、稽古場が爆笑に包まれるシーンが多々あった。座組全員が出揃う本番がより楽しみになった。なお、いくつかのシーンを取材したかぎりでは、作品名に含まれる単語、「おめかし」と「鉄下駄」の登場を確認できず、「総本山」もほのかに予感させる程度だった。はじめて来場される方には、事前情報(主宰発信のあらすじ等)にとらわれずに鑑賞されることをおすすめする。

稽古後のインタビューに参加したのは、大谷、かませけんた、三葉虫マーチ、東野良平、立川がじら、フルサワ、佐藤一馬、佐々木タケシ、川舩、ごどう(コントグループ「シル」)、うちやまきよつぐ(演劇らぼ・狼たちの教室)、そして神谷圭介。

──1年2か月ぶりの本公演に向けて、意気込みをおきかせください。

大谷 台本の書き方をはやく思い出したいです。

東野 下北沢での本公演は初めてです。それが駅前劇場というのは恵まれていると思っています。5月に予定していた公演が中止になり、期間も空きましたから、あらためまして、はじめましての気持ちで、お客さんをアッと驚かせたいです。

大谷皿屋敷

東野良平

三葉虫 自分がどんな役かまだわかってないのですが、大谷さんが「よし」って思うように、ちゃんと台詞を言えるようにしたいです。

かませ 止まった時がようやくまた動くという感覚です。それに加えて、棚からぼたもち的に下北沢初進出を駅前劇場でできることになりました。演劇界ではコロナの影響が言われている時期ですが、地蔵中毒では「そんなものはなかったよ」っていうモノを見せたいです。僕らがやるのは、そういうところだと思うので。

三葉虫マーチ

かませけんた

がじら コロナにどう対応するか、それが作品にも反映されている演劇界で、コロナから一切何も感じていないかのようなものを、相変わらずやっております。一方で、制作側は気をつけておりますので、お客様にもご協力いただけますようお願いいたします。安心してお越しください。でも、我々は何も変わっておりません。

フルサワ この状況下で来てくださるお客様の期待を裏切らないよう、対策を徹底して、行ってよかったと思っていただけるよう、コロナを忘れる時間になっていただけるようがんばります。あと、自己都合で降板しないようがんばります(「本当だよ(笑)」と、かませ)。

立川がじら (立川志らく一門)

フルサワミオ

──佐藤さんは、三度目のご出演でしょうか。

佐藤 駅前劇場はすごいところなので、今までよりも大きい声でがんばります。

がじら 関口オーディンまさおが、大声担当の後継者として指名した男です。

かませ 準レギュラーです。

佐藤一馬

──川舩さん、佐々木さん、ごどうさん、そして映像出演のうちやまさんからは、抱負とともに、出演を希望された理由をお聞かせください。

川舩 過去の公演を何度か観て、出たい、出なければと思いました。地蔵中毒の公演に出れば、大谷さんの書く変なせりふを言えて、楽しそうだ、と。今できることを最大限やります。抱負は、……ウケたいです。

佐々木 『ずんだ or not ずんだ』(2019年9月)に、脳天を貫かれたような衝撃を受けて、オーディションに参加しました。地蔵中毒の中で、新しい役割を担わせていただきます。新しい風を吹かせることができたらいいなと思います。あと、僕も……ウケたいです。

川舩晃平

佐々木タケシ

うちやま 5月公演がコロナで延期となったので、なんとか無事にゴールインできればと思います。私もきっかけは『ずんだ or not ずんだ』です。最近の演劇界が静かな演劇に染まっている中、80年代の小劇場世代の僕としては、もの足りなさを感じていました。そんな中で地蔵中毒に出会い、まだこういうのがあるんだ!と感動して。ちょうどその頃にオーディションが開催されて、これだと思いました。

うちやまきよつぐ

ごどう 抱負は2つあります。1つは、お客様や関係する皆様への敬意を欠くことなく、最終日までやりきること。もう1つは、大谷さんが思い描くことをこぼさず、お客様に伝えること。普段はコントをやっています。打算的かもしれませんが、コメディアンの修業の場として地蔵中毒以上の場所はないと思い、オーディションを受けました。公演が終わった後の自分には、絶対何かがあると思っています。

ごどう

──テニスコートの神谷さんも、初出演ですね。

神谷 まだどうなるか想像がついていません。模索中ですが、がんばります。

──出演のオファーがあった時、躊躇はされませんでしたか?

神谷 躊躇、しました。なんでオファーがきたんだ?と(笑)。大谷くんとは面識もありましたし、ユーロライブでの落語会『劇団「地蔵中毒」寄席』(2020年2月)が印象にも残っていました。でも自分が地蔵中毒で何か役割を担えるという気がしなくって。だから躊躇しました。僕はボケる方ではありません。方向性として、なんでもない言葉を、それっぽい風にみせることをやってきた感じはあります。そういう関わり方になっていくのかな。

大谷 僕は神谷さんを、ナンセンスの先輩だと思ってます。ナンセンスの未来について熱く語ってくれる先輩として、ナンセンスを教えてほしいです。

神谷 ナンセンスの未来って!(笑)

神谷圭介(テニスコート)

──本日不在の田中渚さんは、地蔵中毒×東京にこにこちゃん×パブロ学級のコラボ公演「鼻雑技団」以来のご出演ですね。本公演は初参加です。

大谷 渚さんは、今回映像で出演する関口オーディンまさおさんの学生の頃からの親友なんですよね。偶然。全体を観た時、ここに渚さんが入れば、いいバランスになるんじゃないかと思い、出演をお願いしました。

東野 芯のある女優さんだよね。

大谷 そう。鼻雑技団でやってるのをみて、純粋に変なことを、ヘンなことをもっと長尺で言わせたら、どうなっちゃうんだろうって。


■赤字覚悟、その背景

──駅前劇場での公演のお話が来たとき、慎重に検討されたそうですね。

大谷 5月に予定していた公演が中止になった時、尋常じゃない額の借金を抱えてしまったんです。またそういうことになったら……って悩みました。

がじら お話をいただいたのは、今以上に何も先が見えない時期だったんですよね。

大谷 そう。5、6月のころ。

──そのようなリスクがある中、開催を決めたのはどのような判断があったからでしょうか。

大谷 5月のオンライン配信()で、借金をうめることができたので、何かあればまた何かやればどうにかなるかなって。赤字が出たら……客に金払わせればいいんだなって(笑)。

東野 最低だな!(一同、笑)

※「赤字補填だよ!おっかさん! 4夜連続!過去公演配信祭!」『地蔵中毒の人力ネットフリックスvol.1~紅茶の美味しい粘液直飲み専門店~』で過去の作品の舞台映像を配信。

『おめかし、鉄下駄、総本山〜削ればカビも大丈夫〜(村の掟、全無視Edition)』の感染症対策
駅前劇場は、客席数80%の制限を設けている。それを下回る50%強(1公演75席)におさえ、全席指定で販売している。最前列の客席には、フェイスシールドが用意され、終演後の役者面会や物販は行わない
出演者へのプレゼント、差し入れ、お花の類も一切受けない。詳細は公演情報欄を参照のこと)。稽古場では、手の触れる部分はアルコールで消毒をし、1時間に1回換気。入室時の検温や消毒、マスク、フェイスシールドを着用し、全員、朝夜2回と稽古場に入る前に検温し、スプレッドシートに記録をのこしている。「地蔵中毒でクラスターとか、洒落にならないですから」と、かませ。東野も「主宰が、ゴミ屋敷で有名になってしまったので、手洗いしてなかったんじゃとか言われてしまいますよね。実際は、もともとマメに手を洗う人なのですが」と悩ましげだった。



──舞台公演が難しい2020年においても、皆さん、活動の場を広げています。大谷さんは、松尾スズキさんやKERAさんの目に留まる存在となりました。大谷さん、変化を自覚する部分はありますか?

大谷 シャワーを浴びながら、ア゛ア゛ア゛ーーーッ!!ってなる日が減りました。

(一同、「へぇ」「そうなんだね」とどよめく)

がじら 髪、洗うんだね。

大谷 洗うよ(笑)。髪を洗いながらアアアーーッ!ってなって、そのあと「(穏やかな声で)大谷くんが、一番おもしろいよねぇ~?」って自分で言う。東京に出てきてからずっとやってた。その回数が減りました。

神谷 でも分かります。僕らは3人組でやっていて、3人で台本を書いていても、アアアってなります。劇団だと、大谷くんが1人で背負う感じが強くなるでしょうし。

──そのアアアが減ったのは、なぜだと思いますか?

大谷 言い訳ができるようになったんですよね。親にも自分にも。最悪この先、何もなくなっても、「でも俺、松尾さんと仕事したしな」って。

──松尾スズキさんのこと、大好きでしたもんね。

大谷 (小声になり)そうなんです……大好きなんです。

一同 (笑)


■「おめかし、鉄下駄、総本山」について

──今作の印象をお聞かせください。

かませ 今回、正直おもしろいです。今までも稽古の段階で「ここがこう通じるんだろうな」とか、ギャグの作りはみてきましたが、今回は完全にお客さん目線で楽しめる。大谷くんが、ワードのチョイスとか言葉ではない部分にも演出してるんです。演者の動きとか見せ方が洗練されてきて。演出家としてこの人はレベルが上がってきてるんだなって感じています。

東野 客演の方に出ていただく際も、今までは、まず稽古で、地蔵中毒の音の出し方に慣れてもらい、こちらの空気感ややり方にあわせてもらう割合が高かった。でも今回は、客演の方がもともと持っているものを出してもらっています。今までの僕らではできなかった、その人がいるからできるシーンが、メチャクチャ面白くなっているんです。年代的には、20代前半の方々にも参加いただいて、地蔵の幅を広げてもらっています。

フルサワ うちやまさんは、60…?

うちやま 66です!

がじら それもありがたいですよね。上の世代の方も「地蔵中毒おもしろい、分かる」と言って出てくださるんですから。

──初出演の方は、稽古場で驚いたエピソードがあればお聞かせください。

うちやま 大谷さんの脚本は、ほとんど初稿のままだと聞いて、驚きました。初稿でこれなの!?って。最初からこれが降りてくるなんて、モーツァルトだ!天才だ!って思いましたね。

神谷 地蔵中毒に限らず、稽古をしていると「ここの動きはどうしようか」、「上手(かみて)にハケて、こうしようか」みたいな知恵の出しあいがありますよね。完全にあの感じで、劇中のセックスの体位に知恵を出しあうんです。「それだとこっちの客席からの見え方が」とか「ペニスの角度がおかしい」とか。フリでやるのに、そこにどこまでリアリティを求めるの?って。でも別にリアルにもなっていない。じゃあ、この時間はなんなんだ……って(一同、笑)

──最後に大谷さんより、読者の方へメッセージをお願いします。

大谷 ようやく劇場でできます。劇場の帰り道に、「やっぱり無駄だったな」と思う時間って大事だと思うんです。コロナ中、あの時間って豊かだったなあと思ったんで。今回も絶対、無駄だったと思わせるようにやります。本当に何見せられたんだ、っていう豊かな時間を提供しますので、よろしくお願いします。

ご来場の際はマスクの着用を。

「無教訓意味なし演劇vol.12『おめかし、鉄下駄、総本山〜削ればカビも大丈夫〜(村の掟、全無視Edition)』」。は、2020年11月12日(木)~15(日)の上演。「無教訓意味なし演劇」を冠した本公演は、コラボ公演や短編とは段違いの角度と濃度で、地蔵中毒が本領を発揮する場だ。劇場やご自宅のディスプレイで、意味も教訓もコロナ感もゼロの世界を楽しんでほしい。

取材・文・撮影=塚田史香



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