宮田大が語る最新リサイタル・ツアー&アルバム「旅をするように、音楽の物語を楽しんで」

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 チェロの宮田大が2020年12月から2021年1月にかけて、リサイタル・ツアーを開催する。

3つのプログラムが用意され、それぞれに、チェロの名曲からオーケストラ曲の編曲ものまで、ストーリー性のある多彩な作品が並べられている。

――今回、リサイタル用に3種類のプログラムが組まれていますが、それぞれどのように選曲されましたか?まずはAプログラムからお話ししていただけますか?

コロナ禍のたいへんな世の中で明るい気持ちになれないことも多いので、一つひとつの曲で物語を感じことのできるプログラムを組みました。

まずは、サン=サーンスの「白鳥」やポッパーの「ハンガリー狂詩曲」などのチェロを代表する曲から始めます。「ハンガリー狂詩曲」はチェロ奏者にとって十八番としていないといけない曲。私の1stアルバム『FIRST』(2011)にも入れました。あとのバルトークの「ルーマニア民俗舞曲」とともに楽しんでもらえたらと思います。

ファリャのバレエ音楽「恋は魔術師」は、もともとオーケストラ曲ですが、チェロとピアノのバージョンに編曲してもらいました。チェロとピアノで演奏すると、オーケストラのような壮大な音から二人だけの繊細なやり取りまで、登場人物をはっきりと表現できて、お客さまに物語を伝えやすいのです。私はお客さまに太い柱を伝えるので、お客さまには自由に聴いていただきたいと思います。「恋は魔術師」では、情熱的な音楽や人間味のある曲を、人それぞれの感情に音楽をのせて、感じ取ってほしいです。

宮田大

ヤナーチェクの「おとぎ話」は、具体的なストーリーがあるわけではありませんが、演奏を聴けば、イメージがわく曲です。第1楽章は物語が始まる序奏、第3楽章は踊っているようなポルカなど、3つの楽章を通して物語を表現できればと思います。

バルトークの「ルーマニア民俗舞曲」もいろんなところを旅してもらいたいという気持ちで選びました。様々なイメージがわくと思います。旅と物語を聴いていただきたいですね。

ブルッフの「コル・ニドライ」は、自分にとってとても大切な曲です。アーメンというか、神様に感謝するような曲なので、そのときそのときの自分の感情を一期一会で感じとって、感謝の気持ちで演奏したいと思います。

また、来年は、ピアソラの生誕100周年なので、ピアソラの「オブリビオン」も演奏します。「忘却」という意味ですが、チェロは消え入るような一番小さい音まで出せるので、歌詞(注:歌曲でもある)にもある、付き合っていた人が去って行ったベッドの温もりやむせび泣くような気持ちをチェロで表現できればと思います。

加羽沢美濃さんの「デザートローズ」の原曲はトロンボーンとピアノのための曲です。「チェロでも弾いてほしい」と言われて、加羽沢さんのピアノで弾いたことがあって、すごくいい曲だったので、たくさんの人に知ってほしいと思い、プログラムに入れました。「デザートローズ(砂漠のバラ)」とは、砂でできた花の形をした石のようなもののことです。消えてしまいそうなものを大切にする気持ちで演奏したいですね。寂しい感じや疾走感、自分のものを見つけようとする旅にでかけているような曲調。大好きな曲です。

宮田大

――B・Cプログラムでは、ラフマニノフのチェロ・ソナタを弾きますね。ラフマニノフのチェロ・ソナタは純粋な器楽作品ですが、やはり、ストーリーのようなものを感じるのでしょうか?

ラフマニノフのチェロ・ソナタは大好きな曲です。霧のかかった森から何人かの登場人物が出てきて、その人たちがどういう感情で物語がすすむのか、そういうことを演奏でお伝えして、あとはお客さまの想像にお任せしたいです。私は、バッハの無伴奏チェロ組曲でもベートーヴェンのチェロ・ソナタでも弾いていてオペラのようなストーリーを感じます。チェロは人の声に近いといわれますが、いろんな物語を自分で感じてチェロで歌いたいのです。

――Cプログラムではリムスキー=コルサコフの「シェへラザード」をチェロとピアノで演奏しますね。

リムスキー=コルサコフの「シェへラザード」は、映画やドラマの音楽で活躍する山本清香さんに全楽章のいいところを15分ほどの曲に編曲していただきました。「アラビアン・ウェーブ・ファンタジー」という副題がついていて、編曲というより彼女の作品ともいえます。今回が初演です。作品に彼女のイメージを取り入れて、シェへラザード。の魅力をチェロとピアノで伝えられたらなと思います。

レスピーギの「リュートの古風な舞曲とアリア」第3組曲は、2,3年前にチェロとピアノのバージョンに編曲してもらい、初演したときに、すごく良い反響をいただきました。この曲の魅力をチェロで表現したいと思ったのです。原曲の弦楽合奏とは違って、チェロではかなり小さい音まで表現できます。チェロとピアノの二人のやりとり全部を通して物語を感じてほしいですね。

グラズノフの「吟遊詩人の歌」はむせび泣くようなチェロのメロディを聴いていただきたいです。
12月にはクリスマスがあり、1月はハッピー・ニューイヤーということで、曲を聴いて、ストーリーを感じて、おなか一杯になって帰ってもらえたら、うれしいです。

宮田大

――ピアノの共演は、福間洸太朗さん(Cプログラム)と西尾真実さん(A・Bプログラム)ですね。

福間さんとは今回が初共演になります。ラフマニノフのチェロ・ソナタが彼のピアノ協奏曲第2番と同じ時期の作品なので、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番をたくさん弾かれている福間さんのピアニズムを楽しみにしています。
西尾さんは、ロシアに留学されていたことがあり、スクリャービン国際コンクールで第1位を獲った方で、ラフマニノフを大得意とされています。

――CDでは、ギターの大萩康司さんと新しいアルバム『Travelogue』を録音されましたね。

大萩さんとは八ヶ岳高原音楽堂で共演したり、王子ホールの“大ism”で演奏を重ねたりしてきてきました。音楽での一番の理解者であり、お互いの音楽が好きで、お互いの人間性も合っています。タイトルの『Travelogue』とは、旅行記という意味で、いろんなところを旅しているというイメージです。

ニャタリの「チェロとギターのためのソナタ」は、チェロとギターのためのオリジナル作品で、皆さんが知っているような作曲家や曲ではありませんが、ブラジルのサンバのようなところもある、聴きやすい曲です。大萩さんとの情熱ある音で聴いてもらえたらうれしいです。

ルグランの「キャラバンの到着」は映画『ロシュフォールの恋人たち』の音楽で、ビッグバンドで演奏するような曲なのですが、チェロとギターで弾きます。ボサノバ的な雰囲気もある曲です。

宮田大

ピアソラの「ブエノスアイレスの冬」では、チェロとギターの濃厚なものを作りたいと思います。ギターはピアノよりも繊細なところまで表現できるので、ギターの最弱音の魅力を聴いていただきたいです。

ショパンのチェロ・ソナタ(第3楽章)は、私からのリクエストで、大萩さんに編曲していただきました。チェロとリュートのような、味わいのある演奏になっています。

「亡き王女のためのパヴァーヌ」も大萩さんが編曲してくれました。陰と陽の要素、冷たさや温もりのいろいろな温度差を感じてほしいですね。

――新しいアルバムは、今年7月に長野県上田市のサントミューゼで録音したのですね。

サントミューゼはすごく良いホールで、以前に群馬交響楽団とドヴォルザークのチェロ協奏曲を演奏したことがあり、そのときは神様が降りてきたようなトランス状態になったことを覚えいていたので、そこで録音できると知って、テンションが上がりました。ホールの響きが良くて、録音中は、二人で演奏会をしているような気分になりました。

――最後に、アルバムについてのメッセージをお願いします。

聴く方のそのときの感情によって変化しやすい、順応性に富む曲を選んだので、いろんな年齢の方々にも聴きやすく、イメージしやすいアルバムになったと思っています。
大萩さんとはチェロとギターで気持ち良い音楽の対話ができ、ギターの減衰していく音をチェロで補ったり、チェロがギターに助けてもらったりして、お互い無い物を補っています。ピッツィカート(注:指で弦をはじく奏法)しているとどっちの音なのかわからなくなることさえあります。チェロとギターの魅力をたくさんの人々に知ってほしいですね。

今回が大萩さんとのデビュー作ですが、これからも一緒に録音を出していきたいです。『Travelogue』、つまり旅行記のように、ツアーしたいですね。来年5月頃に二人でのツアーの予定があります。

宮田大

取材・文=山田治生 撮影=武田敏将



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