「第0回豊岡演劇祭」フェスティバルディレクター・平田オリザ(青年団)が会見~「国際的なアーティストが育つ、アジアのハブとなるような演劇祭に」

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「第0回豊岡演劇祭」フェスティバルディレクター・平田オリザ(青年団)。 (c)[撮影]吉永美和子
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「第0回豊岡演劇祭」フェスティバルディレクター・平田オリザ(青年団)が会見~「国際的なアーティストが育つ、アジアのハブとなるような演劇祭に」


兵庫県豊岡市で現在構想中の、日本の国公立では初となる演劇やダンスが本格的に学べる大学「国際観光芸術専門職大学(仮称)」の学長候補となり、主宰する劇団「青年団」も2020年までに活動の拠点を同地に移転するなど、豊岡から新たな演劇のムーブメントを起こすべく動いている平田オリザ。その目玉の一つとして、同地での国際演劇祭の開催について言及していたが、2019年9月に試験的な催しとなる「第0回豊岡演劇祭」が行われることに。その内容と狙いを伝えるべく、フェスティバルディレクターの平田が、大阪で会見を行った。

今回参加するのは、「青年団」「柿喰う客」「ホエイ」「うさぎストライプ」の4団体。青年団は、平田の「第39回岸田國士戯曲賞」受賞作で、劇団の代表作でもある『東京ノート』を、多国籍仕様にリクリエーションした『東京ノート・インターナショナルバージョン』を世界初演(9/6~8@城崎国際アートセンター)。近未来の東京の美術館ロビーを舞台に、なんと7言語での会話を同時多発的に行うという。数多くのバージョンを生み出した本作の、まさに集大成とも言える作品だ。「もともとこの戯曲は多言語向きで、2010年には日韓中版も上演しています。現在東京や大阪は、いろんな国の人が普通に歩いてるのに、日本の演劇だけは、舞台上にほとんど日本人しかいないんです。そっちの方が異常だし、多国籍のお芝居が盛んになっていけばいいなと思います」と平田は語った。

青年団『東京ノート』-日中韓俳優出演・3カ国語版-(2010) ©青木司

柿喰う客は、新作『御披楽喜(おひらき)』を世界初演(9/7・8@出石永楽館)。世界的なアーティストである大学教授(もしかして平田がモデル?)のゼミに所属した13人の学生たちが、13年間の栄光と挫折の日々を経て、恩師の13回忌で再開を果たす……という群像劇だ。なぜ彼らを招へいしたかについて、平田は「比較的ポピュラーで、エンターテインメント性の強い芝居をしている所というのでお願いしました。彼らに来てもらうことで、東京の若手の劇団が“自分たちも行けるかも”と思ってもらえるんじゃないかと。これは“できるだけ門戸を開いてる”という、第一回に向けたメッセージです」とコメントした。

柿喰う客『美少年』(2018) ©神ノ川智早

また「フリンジ(自主参加)っぽいものも入れておきたい」という意向で、青年団演出部の一員でもある若手2劇団が、一人芝居で参加。ホエイ『或るめぐらの話』(9/7・8@城崎国際アートセンター)は、視力を失った男の半生を全編津軽弁で上演。うさぎストライプ『ゴールデンバット』(9/7・8@城崎国際アートセンター)は、昭和歌謡を歌う地下アイドルと、歌手の夢が破れた宮城出身の女性の人生を交錯させた物語だ。いずれも兵庫では、これが初演となる。

今後の「豊岡演劇祭」ラインアップのコンセプトについては、柿喰う客招へいの理由でも触れたように「観客動員を強く意識したものになる」という。「演劇祭のメインターゲットは、関西の演劇ファンの方たちなので、数日でだいたい今の東京、あるいは日本の演劇状況がわかるようなラインアップにしたい。[こまばアゴラ劇場]一年分(の演目)が、4日間で観られるようなもの。特に最近は、東京の若手があまり旅公演をしなくなっていますし、演劇が好きな方なら来たくなる内容になると思います。そうなると、あまりにも前衛的な作品ばかりが並ぶようなものにはならないかと。来年以降は演劇だけでなく、ダンスやオペラなどの演目も入れたいと思っています」と、展望を語った。

ホエイ『或るめぐらの話』 [撮影]河村竜也

アジアでは、まだ本格的なフリンジ型の国際芸術祭が実現してないと僕は考えてますが、豊岡には成功の条件がそろっている。最終的に5年でアジア最大、10年で世界有数の国際演劇祭を目指します」と、大きな目標を掲げている平田。この「成功の条件」として、これまで青年団や[城崎国際アートセンター]が築いてきた、国内外の演劇ネットワークの充実ぶりに加えて「多数のボランティアスタッフの確保」と「豊岡市の文化施設と観光ソフトの多彩さ」をあげる。

基本的に、ヨーロッパで成功する演劇祭や映画祭の(都市の)スペックは、(人口)7~9万で、多過ぎると逆に実現しづらい。アヴィニョンやカンヌもそうで、約8万人の豊岡も該当します。さらに豊岡は、城崎温泉などの名所が多く“一度行ってみたかったから、演劇祭があるなら行ってみよう”という勧誘性があります。ヨーロッパのフェスティバルは、そうやって観光とセットで楽しめる所がほとんどですし、だから『瀬戸内国際芸術祭』は成功できたので、そのパフォーミング・アーツ版を作りたいと。さらに豊岡とアヴィニョンは、地理がそっくりです。竹野海岸から浜坂までが日本のコート・ダジュール、城崎が日本のカンヌ、神鍋(高原)が日本のアルプス、(青年団の本拠地となる)江原が日本のアヴィニョンと思っていただけたら(笑)。

うさぎストライプ『ゴールデンバット』(2017) ©西泰宏

会場の方も、[城崎国際アートセンター]を始めとする公立ホールが複数ある上、[出石永楽館]という芝居小屋もあります。さらに江原では青年団の劇場もオープンしますし、いろんな演目に対応できる、個性的な劇場がたくさんそろっています。さらにVIPが泊まるような城崎温泉の宿から、大量の人が雑魚寝できる神鍋の合宿施設まで、あらゆる宿泊施設を持っているのが強みです。9月はボトム(閑散期)の時期だから、それで地域にも貢献できる。フリンジは本来まったくの自主参加ですが、最初はインセンティブが必要なので、宿泊施設を提供するということも考えています。

また『国際観光芸術専門職大学(仮称)』が開校したら、学生はインターンとして演劇祭の運営に関わることで、単位が出るようになります。それ以外にも、希望する学生は有償ボランティアとして参加してもらうので、つまりは150~200人のすごく質の高いボランティアが最初から用意されているわけです。学生にとってもキャリアとなりますし、大学と連動できるのは、大きな強みだと思っています。

豊岡演劇祭の詳細を説明する平田オリザ。 [撮影]吉永美和子

『第0回』はコンパクトにしたのですが、行政もいきなり大規模なものをやっても慣れない仕事で大変なので。行政と民間でどういう仕事の分け方をしたらいいのか、実際にどれぐらいの観客が来るかなどの調査をここで行った上で、来年につなげたいと思います。また世界標準のフリンジ型のフェスティバルを日本で行うことで、日本、あるいはアジアの若手アーティストたちが、普通に世界のマーケットに出ていけるようなシステムを作りたいというのも、アーティストとしての希望。そしてこれによって豊岡が、世界の人から憧れられる街になることが、一番の目標です

平田を始めとするアーティストたちの移転が増えているだけでなく、38の全小中学校に演劇教育を取り入れるなど、これまでにない「アートによる町おこし」で、大きな注目を集めそうな豊岡市。将来的に演劇祭は、その大きな柱となるのは確実だ。記念すべき第一回の演劇祭に、観客(あるいはパフォーマー)として参加する、その下見のような気分で足を運んでみてはいかがだろう。豊岡は温泉とカニ以外にも、数多くの魅力があるエリアだということも、同時に発見できるはずだ。

『第0回豊岡演劇祭』メインビジュアル。

取材・文=吉永美和子



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