佐藤健主演『世界から猫が消えたなら』原作者・川村元気ロングインタビュー「両親、恋人、人生・・・を重ねて見てくれたら」

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いよいよ5月14日に公開が迫った、佐藤健×宮崎あおい出演の映画『世界から猫が消えたなら』。今回、原作小説の作者でもあり、『告白』や『モテキ』など様々なヒット映画のプロデュースで知られる川村元気氏が、すでにSNSなどで「感動した」「泣けた」と話題になっているこの作品について、小説を書くことになったきっかけや、制作エピソードなどを存分に語ってくれた。


映画『世界から猫が消えたなら』の原作を手がけた映画プロデューサー・川村元気 (C)2016 映画『世界から猫が消えたなら』製作委員会

—— 映画プロデュースをされながらも小説を書く事になったきっかけは?

【川村元気】ちょうど『モテキ』や『おおかみこどもの雨と雪』のプロデュースをやっていた頃、出版社から「川村元気の頭の中」みたいな企画術の書籍を出したいとお話をいただいて、もしやるならストーリー仕立てで語らないと面白くないなと思っていたんです。

ある日の打合せで、僕が携帯を落とした話になって、その時、公衆電話で家族に連絡しようと思ったんですが、誰の電話番号も覚えてなくて(笑)こうやって人間の記憶が携帯に預けられて、失われていくんだなと思って。そのあと電車に乗った時に携帯がないので手持ち無沙汰で窓の外を見たら虹がかかってて「うわ、すごい!」と思って、周りを見回したらみんな携帯を見ていて誰もその虹に気付いてなくて……。これはもしかしたら面白い話になるかもと思って、書き始めたんです。

—— やはり映像化を意識して書き上げたのですか?

【川村】最初は全然映像化を意識もしていなくて、例えばタイトルの「世界から猫が消えたなら」って文字からその世界は頭の中で想像できると思うのですが、逆に映画制作側からすると、どうやったら猫が消えた世界が作れるんだろうと。これほど悩むタイトルも無くて、せっかく小説を書くなら映画がものすごく苦手な表現を使って、でも限りなく映画的な世界観で小説を書きたいと思いました。読んだ方は映画っぽいと言ってくれて、でも映画制作側からすると映像化しづらいという作品になったら面白いと思って書き上げました。

さらに映画では難しいとされている「猫」を題材にしたんです。犬は“まて”など、ちゃんと演技ができるから大丈夫なのですが、猫は全然お芝居してくれないし撮影に時間がかかって本当に大変で……(笑)今回、この映画に出演してくれた猫のパンプくんは天才猫だったので撮影は大丈夫でしたけれども。

この他にも劇中の壮大な滝のシーンなどはアルゼンチンのイグアスの滝をイメージしているのでロケが大変だし、日本映画が不得意としているファンタジー要素を入れたり、せっかく小説を書くなら自分が映画でやりたくても出来ない映像化には不向きな悪条件を詰め込んだのですが、いつの間にか本屋大賞にノミネートしていただいたりして、そしてそのまま映画化の話になり……と、最初は「どうするんだ?」って思いました(笑)

—— 映像化が難しいという小説の映画化にあたって苦労された点は?

【川村】まずCM界の天才・永井聡監督ならば、この難しい世界観を成立させてくれるのではないかと思っていました。永井監督が撮った、満島ひかりさんが中島みゆきさんの「ファイト」を歌って話題になった「カロリーメイト」のCMのトーンがとても好きだったので。音楽は岩井俊二監督のファンタジックな世界を支えてきた小林武史さん、役者には一番信頼している佐藤健くんと宮崎あおいさんにお願いしたいと思って全部ダメ元でリクエストしたら、なんと皆さん引き受けていただけることになって。

これだけのクリエイターたちが集まって出来上がった作品ですので、映画化できないと思っていた原作に対する、映画としての素晴らしいアンサーをいただけたと思っています。

▼川村元気氏が映像化には不向きな悪条件を詰め込んだという原作小説

世界から猫が消えたなら

僕は生きるために、 消すことを決めた。 今日もし突然、 チョコレートが消えたなら 電話が消えたなら...

試し読み

—— いつもの映画プロデュースとしての立場と、原作者としての立場と違うなと思うところはありましたか?

【川村】これが不思議な事に全然変わらなかったんです(笑)今、『怒り』や『何者』なども製作していますが、全然心境は変わらなくて……(笑)自分の小説が原作の映画だから……という思い入れで何か違いがあるのかなと思っていたら、これが違いがなくて自分でも驚いています。やっぱり、自分は根っからの映画人だな、と改めて思いました。

2作目の小説『億男』も映画で表現することが難しいお金を題材にしていて、映画でお金自体やお金がない事のジリジリ感を表現することって凄く難しくて、単純に札束を出しても観客は「どうせ偽札だろ」と思ってしまうので。今後もそういった映画では難しい題材で小説を書いていきたいなと思っています。

—— そんな映画が完成し、周囲の反響などはいかがですか?

【川村】沢山の方が「感動しました」とおっしゃっていただいて。特に、若い女性とおじさんからは「泣きました」という感想が多くて、どこか自分の人生と重ねあわせて映画を見て下さっているようなんです。実は、登場人物にあえて名前を付けていなかったり、街も特定せず、描写も最小限に抑えたり……と、観てくださる方がストーリーにのめり込んでいただけるように作っていて、それは僕が小説で狙っていた点なので、人生を重ねて観てくれているという反響は何より嬉しいです。

主役の佐藤健くんが海辺で母親との事を思い出して泣くシーンあるのですが、この場面で佐藤くんは役者というより自分の実際の母親を思い出して泣いているんじゃないかと思えるくらい、彼の気持ちが伝わってきて、観客だけでなく役者も人生を重ねて演じてくれてるんだなと。ここが僕の一番感動したシーンで、佐藤健という役者の等身大というか本性に最も近い部分が見られると思います。

—— そんな佐藤健さんが演じる主人公は、余命を延長するために携帯に始まりいろいろなものを世の中から消していきますが消去される物はどうやって選びましたか?

【川村】先ほどの小説を書き始めるエピソードにもありますが、まずは日常で一番時間を取られている携帯を消したらどうなるだろうと考えました。携帯を消したらコミュニケーションが無くなって、暇な時間が増えて映画を見るなと思って、次は映画が無くなったらどうかなと考えたんです。映画とか音楽って無くなっても誰も困らないけど、無くなったらきっと絶望する人たちが多いですよね。次々と自分を形成している無くても困らないけど絶望しそうな物を消していくストーリーにしました。

—— 劇中で濱田岳さんが演じるツタヤと呼ばれる主人公の友人が勧めてくる映画のチョイスは?

【川村】完全に僕の好きな映画ですね(笑)『太陽を盗んだ男』『ブエノスアイレス』『ライムライト』『アンダーグラウンド』……いつの時代の作品で監督が誰かとかということに関わらず、とにかく良い映画は素晴らしいんだと思える作品をセレクトしたつもりです。

—— 川村さん自身、この作品と同じくいろいろな物が消えていくとした時に、絶対に消したくない映画、音楽、マンガ、小説はなんですか?

【川村】難しいですね。沢山ありすぎて……。でもしいてあげるのであれば映画は『E・T』ですね。これは僕が生まれてはじめてみた映画で、決定的に映画にのめり込むきっかけになったと思っています。
音楽はそうですね……なかなか決められないですが、チャーリー・チャップリンの『スマイル』かな。この曲を聴くだけで、チャップリンの『モダンタイムス』を観た気にもなれますし。
マンガは、藤子・F・不二雄先生の『ドラえもん』ですね。何回読んでも、発見があります(笑)
小説……ではないのですが谷川俊太郎さんの詩集は消したくないですね。僕が小説や絵本を書く時は必ず傍に谷川さんの詩集を置いています。言葉のリズムやトーンはかなり影響を受けています。

—— ありがとうございます。最後に映画を観られる方へメッセージをお願い致します。

【川村】小説を書いた時に、ご覧頂く方がこの物語に自分の人生を重ねて観てもらえたら素敵だなと思って創りあげた作品なので、ぜひそういった形で、ご自分のご両親だったり恋人だったり人生だったりを重ねながら鑑賞していただければ、より深い感動が体験できると思います。よろしくお願いいたします。

■いよいよ5月14日公開

映画『世界から猫が消えたなら』宮崎あおい(左)、佐藤健(右)(C)2016 映画『世界から猫が消えたなら』製作委員会

余命わずかの郵便配達員の前に現れた、自分と同じ姿の悪魔。この世界から大切なものをひとつ「消す」こととひきかえに、1日の命をもらえるとしたら…。

2016年5月14日(土)公開『世界から猫が消えたなら』(愛称=“せか猫”)は、『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『バケモノの子』など数々の大ヒット映画を製作してきたプロデューサー・川村元気が、LINE連載小説という世界初の形態で発表し、90万部を突破した初小説を原作とする映画。主人公“僕”と“悪魔”(二役)を佐藤健、同作のヒロインで“僕”のかつての恋人役を宮崎あおいがそれぞれ務めるほか、“僕”のたった一人の親友に濱田岳、疎遠になった父に奥田瑛二、死別した母に原田美枝子、そして愛猫キャベツが共演する。

出演:佐藤健 宮崎あおい
   濱田岳 奥野瑛太 石井杏奈 奥田瑛二 原田美枝子
原作:川村元気「世界から猫が消えたなら」
監督:永井聡
脚本:岡田惠和
音楽:小林武史
配給:東宝
映画公式サイト⇒http://www.sekaneko.com/
映画公式Twitter⇒https://twitter.com/sekaneko_movie/ @sekaneko_movie #せか猫

※宮崎あおいさんの「崎」は「立つ崎」

ひずみ

シングル

映画「世界から猫が消えたなら」主題歌


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