迫るボーダーライン、善人たちは愛をもって罪を重ねる? 広瀬すず主演『anone』第5話レビュー

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ひとせ ゆみ

静かに激変していくものたち。広瀬すず主演、日本テレビ系列ドラマ『anone』。2月7日(水)に放送された第5話は、否応無くかけがえのないものになってしまった人たちが、互いを助けようとジタバタ足掻く。


広瀬すず主演「anone」第5話 (c)日本テレビ

前回の第4話で、るい子(小林聡美)が持ち逃げした林田亜乃音(田中裕子)の一千万円は何者かに盗まれてしまった。るい子の孤独な半生を知った持本舵(阿部サダヲ)は、るい子を愛してしまっていることを告白した。色気は無いが、切実な思い。今回放送の第5話は、そんな切実な人たちが奇妙な共同生活を送り始めることになって…

悪人たち

広瀬すず主演「anone」第5話 場面1 (c)日本テレビ

妻子ある身でありながら、元勤務先の娘…亜乃音と血の繋がらない娘・青島玲(江口のりこ)と結婚の約束を交わしている中世古理市(瑛太)。なんなんだ、こいつは一体。玲の冷血さもさることながら、中世古の腹黒さは不気味。
るい子と持本は、辻沢ハリカ(広瀬すず)を通じて亜乃音に謝罪に訪れる。「一千万を返せるよう、自首させてください。許してください」…確か税金で犯罪被害者の損害はある程度補填されるんだったような。これに対し、「いえ、そういうのはもう結構ですから…」って、訪問セールス断るみたいに無下な態度の亜乃音。亡き夫・京介(木場勝己)の残した偽札のせいで警察が関わるのは困るのだ。るい子たちを拒絶する亜乃音だが、持本の作った焼うどんにほだされてしまう…このシーンにニヤニヤ。以前、小林聡美がセリフを噛んだ時、田中裕子が見事にフォローして、そのまま放送されたことがあった。今回は「話さざるを得ない」というセリフを盛大に噛んだ田中裕子のあとをリレーして、小林聡美がわざと「はなさささる」と言い間違えてみせた。麗しい連携プレイ。小憎い。この後登場した弁護士事務所のボス弁護士・花房万平(火野正平)との劇中小芝居も合わせて、水田伸生監督は、テレビ放映で舞台的だったり映画的だったり、表現の限界に挑戦しているのじゃあなかろうか…

寄り添う猫たち?

広瀬すず主演「anone」第5話 場面2 (c)日本テレビ

結局花房の振る舞う魚料理と晩酌に大いに盛り上がった持本とるい子は、なぜかそのまま居座ってしまう。「また猫が増えたようなもん」と、淡々と寝具の用意をする亜乃音に、違和感はない…それだけ亜乃音の抱えていた孤独の空白が大きかったということだろうか。人間3人、猫1匹が入り込んでも構わないほどに。
ハリカはそんな奇妙な展開を、心の親友・紙野彦星(清水尋也)に報告する。「いつか病気を治せるようになんとかしよう」と励ますハリカに、彦星はいつ死ぬかわからない自分には、「いつか」は三億年先だという。「いつか○○しよう」という約束よりも、「もうすでに起きた」楽しい話を聞きたいのだ。ハリカはただただ自分の無力さを悲しむ。どうしようもなく気持ちを寄り添わせるだけ、って辛いよねえ。

残すものはなんですか

広瀬すず主演「anone」第5話 場面3 (c)日本テレビ

妻・結季(鈴木杏)に内緒で借りている怪しげなアトリエで、着々とニセ札の研究を積む中世古。実験用に両替機まで仕入れている。この本気がついに実を結ぶ。真ん中部分しか加工されていないただのコピー用紙が、両替機を通すと10枚の千円札になってしまう…!
中世古は我が子と愛妻の寝顔を見つめながら、「やっと朝が来た」「これから始まるんだ」とつぶやく。この男、一体何を企んでいるんだ。亜乃音の娘・玲をどう利用しようとしているのか。
ところで持本は、大きな印刷機が埃をかぶっているのが勿体無い、と、人生最後に印刷屋をやりたいと考え始める。やはり何か残るものを作りたいという。それにしてもるい子と持本二人してエプロンつけて夕飯準備する姿は幸せな新婚さんにしか見えません!
「いつか」の話をやめて彦星に日々のことを、一生懸命報告するハリカだが、突然彦星のレスポンスが途絶えてしまう。ハリカは彦星の容態が心配で病院に駆けつけるが、肺炎にかかり、ICUに入ってしまったのだと情報を得る。放射線治療していた場合、合併症が大敵だからね…しかし、そんな彦星を放って、両親と兄弟はディナーに出かけてしまう。彦星の孤独を思うと亜乃音の家に「行けなくなる」ハリカ。帰宅時間の遅いハリカを心配して探しに出る亜乃音は、電話で「今日は行けない」と繰り返すハリカに「もううちは帰るところ」「行くところじゃない」と強く言い聞かせる。
いいのです。愛情欠乏症の子どもには、そのくらい土足で踏み込んでやってください。

亜乃音の教育的指導

広瀬すず主演「anone」第5話 場面4 (c)日本テレビ

亜乃音は、川越しに、ただ彦星の病院の窓を見つめるだけのハリカを見つける。何もできない自分を責め、本当はそこにいたいのに帰ろうとするハリカを押しとどめ、「寒くても」「何もできなくていいから、その人思うだけでいいから」「そこに居なさい」とハリカを立たせる。愛のムチ。ここを痛んでおかないと、一生後悔する。痛いときは思い切り痛みを味わうべきなのだよね。そして、そんなハリカの純粋な思いが天に届いたのか、彦星は無事意識を取り戻し、病室に戻ってこられる。亜乃音は彦星を見守るハリカを見守っていた。これぞ母の愛。震えながら彦星の無事を伝えるハリカに、「前髪が長すぎるんじゃないの」と前髪に触れる。もう、すっかり母です。 幸せな朝に興奮して、べらべら喋りまくり、亜乃音が前髪を切り終わるのも待ちきれず電源が落ちたように眠ってしまうハリカ。必死に生きるハリカをそれぞれの目で見つめる大人たち。持本は「生きる意味」を感じ、亜乃音は「生きなくたっていいじゃない。暮らせば…暮らしましょうよ」と思いを述べる。

それでも「生きる意味」

ハリカが求める「いつか」を強く否定した彦星だが、命の境目をうろうろしている時見た夢の中でハリカにもらったパン屋のポイントカードで、「明日またパンを買おう」と考えたことが、強烈な体験になったという。「生きたいのかな もうとっくに」「ハリカちゃんに会いたいのかな…」と、初めて、「いつか」「会いたい約束」をする。幼い時二人で見た流れ星を忘れてしまったハリカは、今度こそ一緒に流れ星を見て、覚えていたいと願う。彦星にとって、「明日」=「ハリカ」になった、そんな瞬間。
さて問題の中世古。どうやら以前は若くして起業し、IT長者だったという過去が明らかになる。雨の中、持本の希望…印刷屋をやりたい…を叶えるため、林田印刷をわざわざ訪ねてきたと思われたが、その目的は、ATMや両替機など機械を騙すことのできるニセ札の製造を、亜乃音たちに手伝わせることだった。
優しい人たちは、いとも簡単に犯罪に巻き込まれるものなんだろうか。亜乃音とるい子という、賢い女が二人もいるのだ。なんとかしてほしい。

第6話は、2月14日(水)よる10時放送

黒い男・中世古のニセ札作りの目的はなんだ。次回第6話は日本テレビ系列で2月14日(水)よる10時放送。お楽しみに。

広瀬すず主演「anone」公式サイト
https://www.ntv.co.jp/anone/

anone

テレビドラマ 国内ドラマ ヒューマン

製作年:2018年

私を守ってくれたのは、ニセモノだけだった。

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