globe『Remode 1』小室哲哉ロングインタビュー

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globe ニューアルバム『Remode 1』

8月9日に20周年を迎えるglobeの『Remode 1』を大特集!!
小室哲哉によるロングインタビューは必読です!!

globe20周年第1弾プロダクト『Remode 1』

小室哲哉ロングインタビュー

1995年8月9日、当時trfや安室奈美恵のプロデューサーとしてJ-POPのヒットチャートを席巻していた小室哲哉が自らメンバーとして、ボーカルKEIKO、RAPマーク・パンサーと共にデビューさせた「globe」。

「DEPARTURES」などのヒット曲を世に送り出し、「wanna Be A Dreammaker」で1998年第40回日本レコード大賞を受賞したこともあったものの、2011年に妻でもあるKEIKOがクモ膜下出血で倒れ現在療養中となり、実質的な活動停止状態となってしまった。
その後、マーク・パンサーはDJとして活躍しglobeのリミックス作品のリリースや全国のクラブプレイでglobeの名曲たちを伝え続けた。
そしてglobeデビュー20周年のAnniversary Yearを迎えリーダー小室哲哉がglobeの灯を消さないために選んだ手法は、過去の楽曲を「Remode」(ボーカルトラックは過去のまま、バックトラックを新しい時代に合わせ作り直す)することだった。

小室哲哉がglobeの新作『Remode 1』制作秘話や若手アーティストたちとの関わり合いについて語る貴重なインタビューを是非ご覧いただき、globeの魅力について「再発見」と「新発見」してもらいたい。

小室哲哉

残念な気持ちで迎えたglobe20周年
~状況に導かれた『Remode 1』

――globeが20周年を迎え、アルバム『Remode 1』をリリースする今の心境をお聞かせください。

小室:先日TM NETWORKの30周年記念のライブなどが終わって、今度はglobeと言うことなのですが、正直、KEIKOの病気の事もあって、ちょっと残念に思っているところもあったんです、TM NETWORKの『DRESS2』みたいにボーカルを再録するような制作は出来ないですし。
でも、こういったトラブルも含め、良い方向に導かれるように楽曲制作が出来ているな、と思っていたところもあります。現在の様な状況で無ければ「Remode」と言う形での制作も無かったと思いますし、状況が生んだ形ではありますが、がんばれたかな、とは思いますね。

――『Remode 1』の制作にあたって気にかけたことはありますか?

小室:globeを懐かしいと思ってくださる30歳前後くらいの人達に染みついているglobeの印象を崩しすぎてもいけないし、だからと言って昔のそのままのって言うのも良く無くて、EDMってカッコイイと思っているティーンの人達にも伝わるように、「懐かしい」と「新しい」のちょうど真ん中をうまく表現できるように、と言うことに頭を使いましたね。

――今回の制作であらためてglobeの曲と向き合ってみて気がついたことはありましたか?

小室:KEIKOのボーカルトラックが、僕の使っている最新のソフトシンセや機材とすごく馴染むんですね、20年前の声を聞いても「これは古いな~」とかってことは全然なくて、むしろ声が良く抜けてくる感じで、最新のサウンドにハマったので、これは20曲くらいは作れるんじゃないかと思いました。

楽曲を選曲していく上で、20曲以上候補があって、冬の曲もあるので『Remode 2』は確実に冬までにはやらなくては、と思っています。

――では『Remode 1』に収録された、20曲はどのように選んだのでしょうか?

小室:今回は僕の個人的な想いで17、18曲選ばせてもらいました。その他2曲はファンの皆さんの声を聞きながら選んだんです。

僕は良く「曲は自分の子供たち」と例えているんです、出来の良い子、悪い子、埋もれちゃう子、一人で旅に出てくれる子とか(笑)
その中で、埋もれちゃった子、もっと褒められても良いのにっていう子を特に選ばせてもらった感じです。

その一番は「Many Classic Moments」なので今回の1曲目に選びました。オリジナル制作当時、僕の曲が世の中から飽きられてきて当然という時期ではあったんですが、自分でも「この曲は良いな~」と言う曲が生まれたんですね。
2015年になってAWAやLINE MUSICなど色々なサブスク(ストリーミング)のサービスが一斉に始まって、簡単に音楽を聞ける環境になっているのでアルバムを選んでもらえた時にすぐに聞いてもらえるように1曲目にしました。今回のアルバムの曲順は聞いてもらいたい順と言っても良いと思います。

――デビュー曲の「Feel Like dance」が入っていなかったのが意外だったのですが。

小室:そうですね、8月9日のデビュー曲だし、もちろん候補として考えたんですが、当時僕もglobeの1stシングルと言うことですごく力が入っていて、今聞いても曲がすごく良く出来ていて、ボーカルの絡みや、アレンジが絶妙で、Remode(再構築)するのが難しくて時間が足らなかったと言うところがありましたね。
「DEPARTURES」については冬の曲なので、あえて『Remode 2』に取って置きました(笑)

SNS時代が教えてくれた
「なでしこ大儀見選手」とのエピソード

――なるほど、他にRemodeするにあたって難しいと感じた曲はありますか?

小室:「FACES PLACES」とかも難しいだろうな~と思っていたんですね、そんな時に、女子サッカーなでしこジャパンの大儀見優季選手が、ワールドカップのロッカールームで、この曲を流してくれていたっていうのをネットやSNSを通じて知ることができて、その人たちの期待を裏切ってはいけないと思いましたね。
この1年、SNSを通じていろんな人たちの僕の曲への思い入れや感想をダイレクトに受け取ることができるようになり、globeの曲を大切に思っていてくれる人たちのためにもがんばろうと、マークと2人でロンドンレコーディングに臨みました。

――マークさんとお2人と言えば、7/11におこなわれたVISONでのイベントに小室さんとマークさんが並んでDJブースに立たれている姿を久しぶりに拝見して感動しました。

VISONで久しぶりに同じステージに立った小室さんとマークさん
VISONで久しぶりに同じステージに立った小室さんとマークさん

小室:ありがとうございます。僕は70年代から洋楽ロックのファンですが、当時のバンドなんていろんな波乱万丈がありましたよね。脱退とか、休んだりとか。
有名なところで言うと、Led Zeppelin、YES、Deep Purpleとか数えきれないくらいいますよね。

――確かに、今じゃオリジナルメンバー誰だっけ?とかQUEENみたいにボーカルがゲストアーティストになっても続けているバンドもいますね。

小室:そうなんですよね、色々あるにしてもメンバーの誰かしら、その「冠」と言うか、バンド名という「ブランド」を守り続けていますよね。
Underworldみたいに5人バンドから3人ユニットになり、さらに2人になったり、と形を変えていたり、ソロのアーティストでは無い限りglobeも何とかできるのではないかと思っています。

――ちなみに、差し支えなければKEIKOさんの近況などお聞かせいただけますか?

小室:おかげさまで体調は安定しているのですが、色々な事を忘れてしまっていると言う状況なんですね。でも何か思い出してさえくれれば人前にも出れるのでは、というところまで来ていますね。
明るい何かをファンの皆さんにも提供できるようにKEIKOにも頑張ってもらいたいなと思っています。皆さんをがっかりさせずに、前向きな言葉をもらえるような何かを今ちょうど考えているところです。

――私たちからすると、globeの3人並んだ写真を見せていただけるだけでもホントに嬉しいと思います。

小室:ホントにおっしゃる通りで、ステージの上でなかったとしても、僕とマークの間に立ってくれるだけでも良いかなと思いますね。

このような姿をまたいつか見られる日まで待っています
このような姿をまたいつか見られる日まで待っています

頭をフル回転させた
ロンドンレコーディング

――話は変わりますが、今回レコーディングでロンドンに行かれたようですね。昨年のTM NETWORKのツアーの映像撮影だったり、ここ最近よくロンドンに行かれている印象を受けましたが、ロンドンを選ばれたのには何か訳があったのでしょうか?

小室:2014年の9月に東京・お台場で開かれたEDMのULTRA JAPAN 2014に出演していたAXWELL˄INGROSSO(アクスウェル+セバスチャン・イングロッソ)が、たまたま僕の作業していたスタジオの隣の部屋を使っていて、「いつもどうやって制作しているの?」なんて話をしたんです。

スウェーデン出身の彼らも「絶対ロンドンが良いよ」と言っていて、オススメのマスタリングエンジニアの名前なんかも教えてくれたんですよ(笑)
Led ZeppelinやQUEENの名盤を生んだトレヴァー・ホーンのスタジオでしたし、その時からロンドンでと決めていましたね。

――そんなに前から決めていらっしゃったんですね。

globe
AXWELL˄INGROSSOのお2人と

小室:で、globeのレコーディングを行ったわけなんですが、そのスタジオ自体が移転の予定があって、僕らのレコーディングがそのスタジオでの最後のセッションだったんです。なので、あのスタジオで生まれた最後の作品がglobeの『Remode 1』になったんですよ。

――え~すごいですね!

小室:このアルバムが売れる売れないは別として、あのスタジオの最後の作品ということで自慢話にはなりますね(笑)

――レコーディングはどのような感じで行われたのでしょうか?

小室:実は相当缶詰め状態で、頭をフル回転させて作業をしていました。こんなにヘトヘトになるのは久しぶりといった感じのところまで追い込んでやっていました。

――ツイッターでロンドンの街並みをアップされているのを拝見しましたが、あれは、ほんの一瞬の息抜きだったんですね?

小室:そうなんですよ、全然観光とかしてないですし、ホントにホテルを出たところとか、ちょっと陽の光を浴びないと、という程度の外出時の様子なんですよ(笑)
昨年のTMのライブ映像撮影時は有名な観光地も行きましたけどね。

ロンドンで束の間の休息を楽しむ小室さん
ロンドンで束の間の休息を楽しむ小室さん

――95年以降のプロデューサー時にロサンゼルスやハワイと言ったアメリカ圏での制作が多かった印象があり、アメリカ圏で生まれた楽曲がヨーロッパ、イギリスのロンドンでRemodeを遂げるというのが、globe(地球)の名にふさわしいなと思っていました。小室さんご自身、何か感じられたことはありましたか?

小室:2ndアルバムの『FACES PLACES』は当時、全部ロサンゼルスでレコーディングした作品で、ロスだったりハリウッドだったり、ロックだったりという色合いがすごく強い作品だったんです。僕の制作したアルバムの中で一番ロックしているな~というアルバムですね。

――オルタナ色がとても強いアルバムでしたよね。

小室:一番何をやっても良い時期でもあったので(笑)ギリギリのポップさというのは残しつつも自分の好きなロック色を出せたアルバムでしたね。

――実は私も当時globeの曲をコピーしていたのですが、シングルの「FACES PLACES」はギターで弾くのが楽しい曲でした。

小室:そうですね、あの当時ギターを弾くことが多くて、あのアルバムの半分くらいの曲はギターで作っていて、ギター1本でも演奏出来るような曲が多かったですね。

――「Is This Love」なんかもアコギ1本で弾けるような曲ですね。

小室:今回はその頃の楽曲をロンドンに持って行って、UKロックなアレンジにするわけではなく、EDMのその先というか、今EDMがいろんなスタイルになっているのでその流れに持って行ったんです。今、ヨーロッパでは若いEDM系のアーティストたちがいろんなアプローチをしているところでもありますしね。

――なるほど。

世代を超えたミュージシャンや
リスナーとの関わり合い

小室:最近僕がよく言っているのが、第一世代が僕だとしたら、第二世代が浅倉大介くん、第三世代が中田ヤスタカくん、24,5才くらいの第四世代がtofubeatsくんらで、体育会系の上下関係ではなく、良い意味で世代を超えた横の交流が出来ていますね。

――おお、良いですね~。そういったアーティストの方たちの世代を超えた交流が行われている時に、ファンである私たちもファン同士世代を越えた交流が出来るように気をつけたいと思いますね。

小室:僕もこの先そんなに長くは続けられないかもしれないですし、若いみんなと仲良くやっていきたいと思っていますね。
この前もSEKAI NO OWARIのライブを見に行ったんですね、その時、お客さんから斜に構えられちゃうかもなんて思って行ってみたら、むしろ皆さんフレンドリーで、声をかけてくれたり、彼らのライブは写真OKだったので、過去最高にたくさんの人からカメラを向けられる体験をしましたね(笑)
すごくセカオワファンの方たちからwelcomeな印象を受けたんですが、これも音楽だからこその世代を超えた交流なのかなと思いますね。

――良いお話ですね~。

SEKAI NO OWARIライブ会場にて
SEKAI NO OWARIライブ会場にて

小室:これからフェスとかにも少し出たいと思っていて、そう言うところでの世代を超えた交流も楽しみですし、考えてみるとglobeの楽曲がちょうどいろんな世代の真ん中くらいなのかなと思いますね。
今思えばですけど、90年代いろいろ大変でしたけど頑張ったおかげでこういう環境に身を置けているのかなとも思います。あの頃の僕の子供(曲)達に助けられて今があると言うことを実感していますし、本当に子供(曲)達に感謝していますね。

――私たちも感謝を感じることがありまして、小室さんの曲が今でもテレビから聞こえてきたり、小室さんご自身も音楽以外の番組で笑顔を見せてくださったり、雲の上の存在だった小室さんがサイン会などを開いてくださったり、この1,2年で私たちの近くに来てくださっているように思います。

小室:そうですね、僕自身が子供(曲)達に感謝している、第一人者だと思っていますし、音楽が繋いでくれた色々な御縁があって本当に今の僕があると思います。

最近の大きなトピックスとしてはやっぱり、先ほどの、なでしこの大儀見選手が「FACES PLACES」をワールドカップのロッカールームで歌ってくれたこと、もうひとつは最近CMで「WOW WAR TONIGHT」を使っていただいたこと、この95,6年の曲を今でも何かに活かしてもらえているというのは本当にありがたいですね。

制作秘話①
「FREEDOM」「UNDER Your Sky」

――ではここで、『Remode 1』の収録曲についてお話をお伺いしたいと思います。まず、先行配信された「FREEDOM」を聞いたのですが、ボーカルトラックはもちろん95年のもので懐かしさを感じたのですが、バックトラックは完全に新しいトラックになっていましたし、サビのコードがBm(マイナー)からD(メジャー)に変わっていて、「あれ?なんか妙に明るい曲調になっている!?」と、驚きというか、戸惑いにも似た感覚がありました。

小室:全くその通りですね(笑)当時の「FREEDOM」は歌詞も社会性のある内容で、マイナーコードなので今聞くとちょっと重た過ぎるような感覚もあったんですね。なので、「懐かしい」と「新しい」の真ん中を考えた時にサビのコードはメジャーに変えても良いかなと思ったんです。歌詞は重いけど、曲は明るい、というバランスで。

――なるほど、今の時代に合わせ「真ん中」を表現するためにコード進行も変えたと。

小室:『Remode 1』に取り掛かった時の最初の1曲目がこの曲なんですね。で、どれくらい変えちゃっても良いかのトライとか実験をしてみて、「意外と馴染むな」と思えたんですよ(笑)

――確かに(笑)何回も聞いているうちにこちらのバージョンに慣れている自分もいます(笑)

小室:そう言ってくださる方が多くて(笑)何回も聞いていると、昔のリフの感じとか、シンセソロとか忘れちゃったよなんて言ってくれる方もいますね。

――同じような展開で言うと、「UNDER Your Sky」も、原曲はせつない歌詞とマイナーなサビが「曇り空」を連想させる曲調だったのが、今回、サビがメジャーコードになっていて「晴れた夏の空」を連想させる曲に様変わりしましたね。

小室:そうですね、音楽で大きな2つの要素「マイナーキー」と「メジャーキー」を変えるだけで曲調がガラッと変わるということをこのアルバムでは使わせてもらいましたよね。

でも、今回のアルバムの曲はBPMはそんなにいじっていないですし、ボーカルのキー(音程)も変えてないですし、KEIKOとマークの声は自然体で使いたいなと思って、人工的にいじらないようにしましたね。

――確かに音程については安心して聞けました。

小室:下手に加工して「あれ?何か高すぎない?」というような違和感を聞いてくれた人達に与えたくなかったので、ホントにいじってないですね。
あとは、サブスクで音楽を聴ける時代に突然なってティーンの子たちが全くの新曲としてこのアルバムを聞いてくれたときに、彼ら彼女らの耳に引っ掛かってくれたらいいな、というところもあってメジャーキーにしてみました。これをきっかけに「小室」の名前は知っているけど、楽曲は知らないという人たちにも楽曲を知ってもらえたら良いなと思いますね(笑)

――なるほど、小室さんの門戸の広さが窺えますね。

小室:あと、歌詞なんですが、globeだけでなく安室さんや華原さんなど一連のプロデュース楽曲もそうなんですが、なるべく時代を感じさせないような、月日が経っても古臭くならないような歌詞ということを作詞家としては意識して書いていました。

――確かに今聞いても古い感じはしないですね。

小室:実はこれは間接的に山下達郎さんから教えてもらったことなんですよ。山下達郎さんのエンジニアの方から聞いた話で、「あんまり時代に寄り添った歌詞にすると長く聞いてもらえないよ」というお話をいただいたんです。実際、達郎さんの曲ってそうですよね。

――「クリスマス・イヴ」は毎年聞きますしね。

小室:そう、それ以外の楽曲もやっぱり今聞いても違和感というか、古い感じはしないんですよね。
ですから、先輩ミュージシャンからの助言を受け継いでいるんですよね。ホントに素敵な「助言」だったと思いますね。

制作秘話②
「Shine on you」
~KEIKOが代弁してくれていた僕の気持ち

――その歌詞に関連してお聞きしたいことがあったのですが「Shine on you」で「二十世紀少年」や「get wild & tough」というキーワードが出てきますが、当時どういう思いでこの詞を書いたのでしょうか?

小室:この頃、たまたま浦沢直樹くんが僕と同じ中学の後輩だったと言うことを知った時だったんですよ。びっくりして、何かに記しておこうと思ったんです(笑)

――お~先日テレビ番組でもお話しされていた、「二十世紀少年」の放送部でT.Rexの「20th Century Boy」を流していたシーンはお2人の中学校だったというエピソードですね。その事実を知った後、すぐに歌詞に反映されたんですね。

小室:それとITバブルみたいなことが騒がれていた頃だったので世相を反映した歌詞にしましたね。でも、今聞いても20世紀の少年たちが大人になって活躍している時代なので、まだまだ大丈夫だろうな、と言うことはありますよね。

――あと、2015年8月の今、この曲の「get wild & tough~そんなことを昔歌っていた」という一節を聞きながら、「いやいや、数ヶ月前にTMのライブでGET WILDの演奏中にシンセサイザーほうり投げてましたよね?」なんて心の中で突っ込みを入れてました(笑)

『TM NETWORK / Tetsuya Komuro Synthesizer Performance 2015 -HUGE DATA-』

TM NETWORKのライブでシンセを会場に投げ込む小室さん

小室:そうですね(笑) 実はこの曲を作った当時はすごく自由にやらせてもらっていたので、多少自虐ネタとして僕の曲たち、それこそ「GET WILD」すらも、どんどん古くなって忘れ去られていくのかな、と言うことを表現していたんです。
globeの歌詞については、KEIKOが歌っていたとしても、僕自身の心境を歌ってくれていることが多くて、彼女自身「私は小室さんのフィルター」というような言い方で、僕の気持ちや立ち位置を歌を通してみんなに代弁してくれていたんです。

――そうだったんですね。

小室:globeの曲の全てがそうではないんですが、歌詞の一節、二節に僕の気持ちが投影される個所があって、そういった形でも素直に僕の気持ちを書けるのは唯一globeだけだったんです。プロデュースワークや楽曲提供ではなかなか出来なかったんです。

――なるほど、安室さん、華原さん、それぞれの世界観があるでしょうしね。

小室:TMについても、僕の個人的な気持ちを持ち込むと言うことではなく、木根君、宇都宮君の3人と作る異空間というようなテーマをデビュー当時から決めていて、未だにそのテーマを守り続けていますよね(笑) なので、TMは昔から一貫して各自のエゴみたいなものが出ないようにしていますね、ずっと。

――おぉ、そうだったんですね。

小室:本当に僕の心境をつづれるのはglobeだけなので、今の僕の心境だったりglobeを通じて伝えたいメッセージというのは実はたくさんあるんですよ。
なので本当はglobeとしての新曲は作りたいんですけどね。曲というより、歌詞として作りたいものがたくさんありますね。僕がシンガーソングライターだったら間違いなく自分で歌うところなんですが、そうもいかなくて(笑)
なので、何か今できる形で表現できないか、ということを模索しているところです。

制作秘話③
「FACES PLACES」
~ピアノ・EDMで伝えたロック魂

ピアノと向かい合い音を紡ぎ出す瞬間
ピアノと向かい合い音を紡ぎ出す瞬間

――次に「FACES PLACES」についてお聞きしたいのですが、先ほどのお話にあった通り、原曲はギターロックな作品が、今回ジョン・レノンの「Imagine」を彷彿とさせるピアノではじまり、全く違う楽曲になっていたのですがとても感動しました。

小室:そうなんですよね、あえてそう言ってもらえるように作ったんです。原曲のギターの感じに対抗できて、ピアノでのロック色、ロック魂と言うことを考えるとやっぱり、ジョン・レノンはありだなと思って。
遅めのBPM(テンポ)なんですけど、しっかり踊れるような、ダンスミュージックとしても受け入れられる作りにもしたかったんですよね。本当に再構築するのが難しかったんですが自分でも相当頭使って作ったなと思います。

――あと、この曲のKEIKOさんのボーカルはライブのテイクですか?

小室:ライブというか2005年にiTunes Originals versionというのがあって、ライブ録音的にレコーディングしたもので、初期のテイクではないんです。なので歌い方もちょっと違うんですよ。

――プロのミュージシャンに失礼な言い方になってしまいますが、聞いていてちょっとテンポより速くなったり、音程が上ずったりしている個所があるような気がして、「あれ?こんなボーカル聞いたことないぞ?」と思ったんです。

小室:それは良く聴き込んでくださっている方だからこそ解るところだと思います(笑)最後の年号のところも「2005」と歌っていますし、ここまで聞けば「あれ?」と思ってくれますよね。
こういった隠れたボーカルトラックもあるので『Remode 2』も楽しみにしていて下さい(笑)

ジョン・レノン Imagine (2010 - Remaster)

Imagine (2010 - Remaster)

ジョン・レノン

制作秘話④
「wanna Be A Dreammaker」
~マークの成長とロックレジェンド達への想い

ロンドンレコーディングに臨む小室さんとマークさん
ロンドンレコーディングに臨む小室さんとマークさん

――「wanna Be A Dreammaker」では曲の最後にマークさんが新たにラップを追加されていますね。

小室:そうですね、あれはロンドンで一緒にレコーディングしました。ロンドンではマークが4曲新たにレコーディングしていて、「wanna Be A Dreammaker」「Judgement」「UNDER Your Sky」あと一曲何だったかな?(笑)えっと…なにしろ4曲、ささっとやったんですよ(笑)

――(笑)マークさんは、1日か2日しかロンドンに滞在されていなかったんですか?

小室:はい、2日だけでしたね。

――「wanna Be A Dreammaker」の当時のマークさんのパートは尖っているというか、がなっているようなラップが印象的でしたが、今回追加されたパートでは少し丸くなったというか、やさしさとせつなさとが同居するような声になっている印象を受けました。

小室:マークもやっぱり、KEIKOが病気になってから、DJとしてglobeを続けてくれていていろんなお客さんの前でDJプレイすることで、表現の仕方を学んだり、成長したんだと思います。
まぁ、マークもそこそこおじさんな方に入ってきましたけど(笑)それでもこの3年くらいで確実に成長を続けているということだと思います。
なので、若いミュージシャンの人達への「40歳を超えたってまだまだ行けますよ」と言うメッセージにもなりますよね。

――そう言っていただけると、私のようなアラフォー世代も頑張ろうと思います(笑)

小室:実際、長年活動を続けているポール・マッカートニーやミック・ジャガーというアーティストは、現役のミュージシャンたちに希望を与えている存在だと思いますよ。

――私も先日、東京ドームでのポール・マッカートニーさんのライブを拝見しましたが、3時間水を飲まずに演奏し続けたり、笑顔をお客さんに振りまくご本人の存在感に感激しました。

小室:そうですよね、この前THE BEATLESの解散後のドキュメントを見ていたんですが、マスコミが苦手だったりして、大成功を収めた方達でも、やっぱり、すごく嫌なことを体験したりしていますよね。
だけど、そう言ったことを乗り越えて、現在のサービス精神とかお客様を大切にするスピリッツみたいなものが産まれてくるんだろうなと思いますね。
長くやれている方は、体調面も含めて幸運な方とも言えますし、ご本人たちも幸運だと言うことを解ってやっているように感じますね。

――なるほど。

小室:僕も、僕自身幸運だと思いますし、こうやってインタビューなど受けさせていただけるのも恵まれているなと思っています。
長くやっていると色々辛いことやダメだったこともあるんですが、やはり、最後は自分の作った曲を聞いてくれて、喜んでいる人達の顔が見えて「嬉しい」と、感じるところに辿り着くな、と思いますね。

――色々な経験を積まれた小室さんだからこそ、今、そう感じられているんですね。

小室:僕がTMでデビューした当時のEPICソニーのプロデューサーの方からは「君たちは青いどころか黄色い!」と言われたことがあるんですけど、その時は「この人何言ってるんだ?」と思いました。でも今思えば確かにそうだったなと思いますね(笑) 今頃になってやっと解ってくるということはたくさんありますよ。ホントに。

――深いですね、小室さんからこういった人生のお話を聞かせていただけるとは思ってもいませんでした。

音楽において「リフ」は
「発明」に等しい

小室:TMデビュー当時は自信満々でやってましたけど、全然売れなくてショックの連続でしたからね。

――それでも心折れずに活動を続けて来たのですね。

小室:そうですね、「Self Controlのイントロのリフが自分の中で生まれなかったら今頃どうなっていただろうか?」「渡辺美里さんのMy Revolutionのサビのフレーズが生まれなかったらヒット曲を作れていなかったかも…」なんて思うこともあります。

――小室さんでもそんな事を思われるんですか?

小室:ワンフレーズが思いつくかどうか、受け入れられるかどうかって、大きいですよね。音楽のリフとかワンフレーズというものが、人々の心を揺さぶったり、盛り上げたりするんですから「発明」に近いものだと思いますよね。
70年代ロックの人達も同じだと思うんですけどホントにDeep Purpleの「Smoke on the water」なんて「大発明」ですよね(笑)

渡辺 美里 My Revolution

My Revolution

渡辺 美里

Deep Purple Smoke On The Water

Smoke On The Water

Deep Purple

――ちなみに、これだけ多くの音楽が存在する中、小室さんが作曲していて「もうリフが出てこない…」とか限界を感じることは今までにありましたか?

小室:自分が過去作った曲に似ちゃうっていうことは、たまにありますよ(笑)
スタッフに指摘されたりして(笑)
でも、ほかのアーティストの方の曲に似ちゃうと言うのはないですね。

あと、テクノロジーの進化で新しい音色が産まれてきて、それに触発されて出てくるもの、フレーズっていうのもたくさんありますよ。
音楽もどこかのタイミングで終焉を迎えて繰り返しになる時が来ると思うんですけど、まだ「のりしろ」みたいなところがあるというのは感じますね。少なくとも自分ではまだ全然作れますね。

――おぉ、素晴らしい!

小室:特に「イントロで驚かす」というアイディアは山ほどありますし、若い子が聞いてびっくりしてもらわないと、つまらないので、若い子たちに聞いてもらって「小室さん全然衰えないですね」と言ってもらえるように頑張りたいですね。

――今のお話を聞いて思い出したのですが、今回のアルバムのノリの良い曲のサビがドン、ドン、ドン、ドン、と言う4つ打ちのリズムでなく、ターッ、ターッ、タ、ンタッ、ターという付点8分音符のリズムが使われていますよね?「FREEDOM」や「FACE」のサビを4つ打ちにせず、このリズムが出てくるのですが、今、このリズムにハマっているのでしょうか?

小室:そうですね、これは狙ってやっていますね。今の若い世代の子たちはTVから流れてくる音楽もそうですし、正確なテンポの曲を聴いて育っているので、正確なクリックで4/4拍子を聞きわける耳があると思うんですね。
カラオケで曲にブレイク(静かな個所)があって、突然歌い出すような時もちゃんと歌えていて、頭の中でカウントがちゃんとできているんですよね。
なので、頭の中で流れる4つ打ちを感じながら、違うリズムを楽しむと言うのが楽しいんじゃないかと思うんです。EDMをやっている洋楽の若いアーティストたちは4つ打ちをいかに崩すかということをやっていますしね。

――なるほど、4つ打ちは感じられつつも変なところでスネアが入ったりするようなやつですね。

小室:リフなんかも、拍の表か裏かわからないような複雑な奴を作ってきますよね(笑)それも若い子たちは聞き分けられるようになってくるのではないかと思います。
『Remode 1』で言えばボーカルがちゃんと入っているので、それを聞けば4/4拍子は感じられますから、バックトラックは4つ打ちにする必要はなかったんです。

制作秘話⑤
「on the way to YOU」「楽園の嘘」
~KEIKOの声を大切にしたレコーディング

――「on the way to YOU」についてもお聞きしたいと思います。今回のバージョンを聞いた時に思わず涙がこぼれてしまったのですが、改めてKEIKOさんの歌声、歌詞、メロディーが非常にすばらしい作品だと思いました。バックトラックもKEIKOさんの歌が引き立つようにあえてシンプルにされている印象を受けました。

小室:おっしゃるとおりですね。原曲のレコーディングの時にオーケストラが入っていたり、KEIKO自身、心がこもっていたので、ためて歌ったり、走っているところも若干あったり、生々しい感じだったんです。
そのため、Remodeする際にクリックには合わなくて、アコースティックギターの松尾君と「歌に合わせようか?」「しかないよね」と言ってレコーディングしましたね。ボーカルをいじって直すこともできると言えばできるんですけども、元の声を大事にしたかったので変に加工したくなかったんです。
それで、僕ら二人の前にKEIKOがいるかのような気持ちで、ギターとピアノを一緒にレコーディングしたんですよ。

――ほぉ、では一発録りだったんですか?

小室:そうですね、多少やり直しはありましたけど、ほぼ一発録りでしたね。もう完全にフォログラム的なKEIKOが、そこにいると言う感じで、それに合わせて僕らが必死に演奏しました(笑)
後もう一曲、「楽園の嘘」もこの手法でレコーディングしました。

――「楽園の嘘」もピアノをすごくエモーショナルに演奏されているように感じました。冷静に聞くと後半少しずれているような

ところも感じられましたが、そこも小室さんの熱い気持ちの表れの様に思いました。

小室:ええ(笑)ライブでボーカル、アコギ、ピアノで演奏した時にクリックを聞いていなかったら、これくらいのズレがあっても当然だなと言うところで、アルバム20曲中2曲くらいはアコースティックなものだったり、ブレがあっても良いかなと思いましたね。

――人間らしい演奏と言う点で非常に良かったと思います。

小室:今の時流でいうと、テンポやリズムがきっちりしていて当然で、ブレなんてありえない事なんですけどね。「ライブ感」や「生々しさ」みたいなものを出したかったんです。

制作秘話⑥
「Is this love」
~色々な世代と「家族」でありたい

――最後に収録されている「Is this love」についても同じような印象を感じましたが。

小室:「Is this love」については「生々しさ」と、「正確さ」の中間をとった感じですね。
リズムはありながらも、それをわざと崩すようなピアノとギターの演奏を加えた感じです。
オリジナルのレコーディングはKEIKOもマークもロスで行ったんですけど、ボーカルがちょっとレイドバック(ゆったり)していて、バックビートと言うかタメがあるんですよね。ロスの気候や気分がそうさせたんだと思います(笑)

――確かにマークさんのラップは特にそういう印象を受けます。

小室:で、僕らがそのボーカルに合わせて演奏しちゃうと、オリジナルと変わりが無いなと言うことで、きっちりしたビートを入れつつも変化を出そうとしました。そのさじ加減が難しい曲でしたね。

――なるほど、そういったご苦労もあったのですね。

小室:先日のVISONでのライブでも新しいバージョンで演奏したんです。マークはステージにまだ残りたかったみたいですけど、僕が彼の手を引っ張って後ろに戻ってもらって(笑)
お客さんの中にもこの曲を聞いてすごく涙してくれた人もいて、1000人くらいの前での演奏でしたけど、お客さんから伝わってきた気持ちみたいなものは1万人、2万人の前でやっているような感覚になりましたね。新しいバージョンの「Is this love」でも違和感なく聞いてもらえたのかなと思いますね。

オーディエンスの気持ちが伝わったVISONでのライブ
オーディエンスの気持ちが伝わったVISONでのライブ

――原曲はバウンスビートでワウギターが印象的でしたが、今回ピアノのアルペジオで構成されていたのが意外でした、それでもすーっと耳に入ってくる感じがしました。

小室:本当に聴き込んでいただいてありがとうございます、苦労して制作した事が報われますよね(笑)

良く聴き込んで下さる人達と、そうではない人達との幅と言うのはあると思うんですが、深く聴いて下さっている方たちから、僕らが突っ込まれても答えられるように深いところまで作っておくと言うのがテーマのひとつでもありました。
「変えない方が良かったんじゃない?」なんて言われないように、「新しい方がいいですよね」と言ってもらえるようにとホントに頭を悩ませました。
もう、すべてのレコーディングが終わった後はどっと疲れました

ね。ロンドンからの帰りの飛行機なんてヘトヘトになってましたよ(笑)

――先程の、なでしこ大儀見選手じゃないですけど、スポーツ選手とはまた違った疲労感なんでしょうね。

小室:そうですよね(笑)今回のワールドカップで大儀見選手がゴールを決めていただいて良かったですけど、「FACES PLACES」歌っていただいた後にケガでもしちゃったら、僕らも責任感じちゃいますよね(笑)
なでしこのメンバーの皆さんもちょうど世代が切り替わるころだと思うんですが、今の若い選手が次のワールドカップに出場しても「FACES PLACES」を使ってもらいたいですね~(笑)
現役ギリギリと言う意味では、僕はなでしこの澤穂希選手に近いものがあるかもしれないですけどね(笑)

――いやいや、まだまだ若い世代に受け入れられるでしょうから、そんなこと言わないでください(笑)澤選手もきっと次のワールドカップも目指してくれますよ(笑)

小室:先ほどお話ししたセカオワのライブの話もそうですけど、若い世代の方たちとも「ファミリア」というか、フレンドリーと言うよりも「家族」的な接し方をしていきたいなと思いますね。
若い世代のアーティストたちとも数回しか会ったことが無くてもネットを通じて長い時間コミュニケーションを取ったりしているので、僕と若い世代のコラボにも期待して下さい(笑)
それもやりつつ、globeは中心にいつつ、TMはどうしようかなって感じですかね(笑)

――TMは今年の4月までで満喫させていただきましたので、しばらくはまたソロですよね(笑)

小室:TMを通じてだったり、この1、2年で、色々な世代の人達に僕の音楽を聞いてもらえているんじゃないかと言う実感がしますよね、上は50代から下は10代とか。

――TMのライブ会場にも親子で来ている方をお見かけしました

小室:この先1年くらいの間に、小学校の高学年くらいの子供たちにも「小室さんでしょ~?」と言ってもらえるように頑張ろうとは思いますね。中学生の子たちは認知してくれていると思っているので(笑)
今、CSのサッカー番組のエンディング曲を作っているのでそう言ったところからもプロのサッカー選手を目指しているような子供たちに音楽を届けて行きたいですね。

――最後に、ファンの方や、新たに小室さんを知った10代の方へも含め、メッセージをお願いします。

小室:そうだな~なんだろうな~。「小室哲哉っていう奴が案外がんばってるよね」っていうことを分かってもらえたら嬉しいなと言うか(笑)
年の割に頑張っていると言うことを伝えられたら良いなと思いますね、少なくとも音は何とかイケてるんじゃないかと思ってるんでね(笑)

――(笑)もちろんイケてますよ!

小室:まだ僕の先輩世代で、年々髪のキューティクルが美しくなっているTHE ALFEEの高見沢俊彦さんもいらっしゃいますし(笑)
TM、globeと同じ3人組ですし、僕もがんばります(笑)

――(笑)今日は長い時間ありがとうございました。

小室:ありがとうございました。

インタビュー/文 music.jp編集部 M

globe20周年第1弾プロダクト『Remode 1』

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