「週刊少年マガジン」マイナーテーマを広めてきた、挑戦の歴史

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マガジンの漫画で特徴的なのは、表現する題材の多様性です。流行に風見鶏になることはなく、ヒットする保証もない珍しい題材に果敢に挑んでいきます。それが顕著にみられる3作品をご紹介します。


「マラソンマン」1巻・表紙 (C)井上正治/講談社

80年代「アイアン・マッスル」

週刊少年マガジンは、まだわが国では一般的とは言い難いスポーツや競技を、
少年漫画という形にして、広く一般の人にその魅力を知らしめてきた歴史があります。
この、永井豪が描いたアイアン・マッスルも、巨大ロボットに乗り込んで、
レスリングの勝負を行うという、組み技格闘技というまだ一般的ではなかった概念を題材にしています。

今では市民権を得た、アマチュアレスリングや
柔術といったグラップリング競技を、日本で初めて題材にした漫画だといえます。
あえて生身の人間ではなく巨大ロボットとからめたのは、もちろん商業上の理由もあるでしょうが、
操縦者であるグラップラーが、ロボットとのシンクロ率を高めることで、
勝利には近づくものの、その代償として、ロボットが受けた傷で
グラップラー自身が重大なけがを負うリスクも抱えるという発想は、
この後に新世紀エヴァンゲリオンをはじめとする、多くの漫画にひきつがれました。

永井豪原作の漫画

RiN

伏見紀人(ふしみ・のりと)の学園生活は退屈そのもの。だが彼には「漫画家になる」という夢があった。やっ...

試し読み

648円/巻

90年代「マラソンマン」

かつての名ランナー・高木は、引退後に飲んだくれの生活をしつつ、一人息子の一馬と暮らしていた。
そこへ、離婚したかつての妻が、一馬の親権を取りにやってきた。
高木が裁判で勝つには、一馬が高木と一緒に暮らしたいという意思表明が裁判でなされるほかに勝ち目はない。
そこで高木は一念発起し、13年前に優勝した福岡国際マラソンに出場するために、
息子である一馬が猛勉強してコーチにつくのも味方につけ、再び体を鍛えてゆく・・・。
一馬が勉強した最新の理論は、高木すらも知らないものがいくつもあった。

このような非常に綿密な舞台設定からスタートする意欲作です。
女性優遇の裁判制度、引退後のスポーツ選手の生活水準の問題・・・。
このように、「マラソンマン」で出てくる諸問題は、まるで現在の日本の情勢を予期していたかのようです。

この漫画の最大の見どころは、父親のコーチをする傍ら、自らも天才ランナーとなってゆく、
一馬の姿です。子供のもつ無限の可能性というテーマが、一貫して描かれています。
この芯があるために、暗いテーマを描いたシーンであっても、読者も希望を失わないのです。

マラソンマン

高木一馬は、負けず嫌いの小学3年生。その父・勝馬は、かつてはマラソンのトップ・ランナーだったが、今は...

試し読み

453円/巻

2000年代「スマッシュ!」

作者である咲香理は、社会人になってからバドミントンを始めたにも関わらず、大変な腕前と知識の持ち主です。
その生の実体験の記憶という、どんな綿密な取材にもまさる知識体系を武器にして、数多くの優れたバドミントン漫画を手がけています。
医師として活動していた経験を漫画に生かした手塚治虫の例を上げればわかる通り、
一芸に秀でた人が、漫画として自分の体験を表現することができたなら、
それは非常に素晴らしい作品になるということがわかります。

ただがむしゃらにシャトルを相手のコートに打ち込めばかてるというような、
単純な競技ではなく、コート狭しとかけまわりながら
同時に高度な演算を行う。このバドミントン特有の難しさと楽しさを、
濃密に描いた作品となっています。
ともすると地味な競技ともいわれかねないバドミントンですが、
バドミントンをやったことがない人でも、この「スマッシュ!」を読んだ後では、
バドミントンに対する見方が少し変わるはずです。

スマッシュ!

バドミントン部に所属する翔太は、中学最後の冬休みに運命の出会いをする。校舎の片隅で、見知らぬ少女が泣...

試し読み

453円/巻

今回ご紹介した、マガジンの漫画3作品は、いずれも取り上げられたスポーツが、
2015年現在は、世界で活躍できるスポーツになっていたり、学生や社会人が、
気軽に挑戦できたりする、門戸を開いたものになっています。
そうなったことの貢献として、これらの漫画が果たした役割は、決して無視できないものでしょう。
これも、マガジンという雑誌がスポーツを題材にするときには、そのスポーツに対して、
深い敬意を払いながら作品を作っていることの証拠だと思います。

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