又吉「火花」だけではない! ここ最近の芥川賞で面白かった本のおすすめ

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純文学の登竜門として新人から中堅作家に与えられる芥川賞。大衆文学の賞である直木賞に比べると読みにくいものが多いですが、中にはその独自の世界観にはまってしまうような作品もあります。毎回候補作も含めてほぼ全ての作品を読んでいる筆者が、今回はここ最近の芥川賞受賞作の中でのおすすめ作品をピックアップしていきます。


「乳と卵」川上未映子(文藝春秋)

■第153回: 羽田圭介「スクラップ・アンド・ビルド」

ピース・又吉と同時受賞したことでも話題となった羽田圭介、メディアでもちょくちょく顔を見かけますね。彼は、芥川賞選考委員の島田雅彦に「天然ボケ」と言われるくらい、世の中に対して変わった捉え方をしているのが特徴です。そんな独特の感性を持って、さまざまな事柄を題材にして小説を書きあげています。今作「スクラップ・アンド・ビルド」のテーマは老人介護、介護する側の少年は仕事を辞めてニートとなっており、老人との奇妙な同棲生活を送っています。「介護をし過ぎれば老人は自立するための行動を忘れて逆に弱っていき、早く安らかな眠りにつけるようになる」という妙な持論を持った少年が、ストイックに老人を介護していく様には、思わず笑ってしまいます。

スクラップ・アンド・ビルド

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■第151回: 柴崎友香「春の庭」

物語に劇的な変化があるわけではないものの、視点の変化や描写力に定評がある柴崎友香。彼女の作風は写真を小説として表現したような雰囲気があるので、風景写真やカメラ好きの人には特におすすめです。今作「春の庭」にもその手法は表れていますが、初期の頃に出版された「きょうのできごと」や「その街の今は」がより読みやすい内容となっています。また、出身地である関西弁の会話の面白さや、住まいをモチーフとしていることも、彼女の特徴として挙げられ、この「春の庭」はそんな彼女の個性が全て結実したような力作となっています。

春の庭

【第151回(2014年上期)芥川賞受賞作】 行定勲監督によって映画化された『きょうのできごと』をは...

■第138回: 川上未映子「乳と卵」

又吉もお笑い芸人と作家の二足の草鞋を履いていますが、川上未映子も作家と歌手活動を両立させている存在として芥川受賞時には話題になりました。受賞作「乳と卵」は女性らしい身体表現をしている快作です。もともと川上未映子は関西弁を用いた独特の文体の詩から人気が出てきた人物で、詩集「先端で、さすわ さされるわ そらええわ」や、その文体の名残がある小説デビュー作「わたくし率イン歯—、または世界」はそのユニークなタイトルも興味深いですよね。また、才色兼備の作家であり、その容姿の美しさも目を引きます。

乳と卵

2008年の第138回芥川賞受賞作! 娘の緑子を連れて大阪から上京してきた姉でホステスの巻子。巻子は...

■第136回: 青山七恵「ひとり日和」

芥川賞発表時には、選考委員がどういう読み方をしたかを知るのも面白さの一つです。当時選考委員を務めていた元都知事の石原慎太郎と、テレビ番組「カンブリア宮殿」でもお馴染みの村上龍が、揃って発表会見に現れて絶賛していたのが、青山七恵の「ひとり日和」です。一人の女性が生きる日常を淡々と書いたような作品ですが、その中でも都会に生きる女性の孤独さがきちんと表現されていると高い評価を得ていました。まだ若い作家ですが、卓越した表現力を持った注目の純文学作家です。

ひとり日和

世界に外も中もないのよ。この世は一つしかないでしょ─二〇歳の知寿が居候することになったのは、二匹の猫...

今回は比較的読みやすい小説を選んでみました。ぜひその作品世界に触れてみてください。

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